玉野市玉地区の建築ツアー続きです。
町の東端に歩いてきます。
角地には、和菓子店だった空き家があります。
秋の陽を受けて佇んでいますが、見ての通り老朽化しています。
実は、インスタでこの建物を見かけ、
いてもたってもいられず速攻で玉野へやってきました。
構造は、木造切妻瓦葺の2階建て、
奥行き3.6m×桁行9mの延べ約70平米、
平面は北に行くにつれすぼんでいく変形型です。
建築年は、昭和36年の航空写真に写っているので、
おそらく1950年代末ぐらいでないかと思います。
もっと古いのかも知れません。
何気に凝った建物です。
妻面のモルタルのパラペットや、正面の庇下には三角形の意匠がなされています。
庇裏は目地入りのモルタル。
庇は端部がアール仕上げ、
正面側2階は、全面が木建で、なぜか引き違いでなく観音開きです。
そのため建具面がデコボコせずに綺麗な平面に見えます。
ガラスは横線の波ガラスで、私の新長田の祖父母の家と同じものです。
デザイン的に非常に美しい。
南東角の外壁も斜めに切り取られており、
和菓子店のショーケースらしきものが残されています。
正面左手はもと店舗だと思います。
右手は製菓工場だったのでしょう。
右側ドアには斜め2本の手すり。
右端腰下にまで窓がありますが、これはなんでしょう?
明り取りにしては下過ぎるし?
北側妻には張り出し部があり、ドアがあるので便所でしょうか?
割れたガラスから2階の内部が見えます。
欄間らしき格子があります。廊下でしょうか?
ネットでは元医院でないかとの情報もありますが、
規模が小さすぎる気がします。
しかし妙に洒落ています。街はずれなので元カフェーなどでは
ないと思います。
斜めの手すり付き出口部分は理髪店だったのかも。
2011年のストビューではプロパンボンベがあるので、
この時点ではまだ使用中だったようです。
店はやってない感じですが。
内部がどんな平面だったのか、2階への階段はどんな感じなので、
非常に気になりますが確認することは不可能です。
現状では一部のガラスが割れているほか、
屋根が撓んで外壁モルタルにもクラックが入っており、
間もなく倒壊するか、
今年中に解体されるかといった感じです。
無くなる前に見なければ、と慌てて見に来ました。
現物を見れて良かったです。
このような建物でも当然設計者がいて、
当時にどんなイメージを描いて設計したのか気になります。
かつてはこの建物も町の人が買い物に来ていたんでしょうね。
夕暮れの昭和の玉野の街に、
白熱灯の電球が灯る風景を想像しながらのBGMはこれ。
家に帰ってから簡単な図面を作図しておきました。
小さいのに変形しているので結構ややこしい。
実際にはもう910mm横に長いと思います。
測量してないので、適当なイメージイラストと思ってください。
日本全国津々浦々にこのような建築は山ほどあると思いますが、
ほとんどが誰にも気にされず解体されていきます。
私が出会えた建物は、できる限り記録して行きたいものです。